経済産業省は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの
固定価格買取制度(FIT)を廃止する検討を始めました。
太陽光固定買い取り制度廃止検討 20年度の法改正目指す 経産省
引用:毎日新聞
国民の負担が増えていることが背景として挙げられますが、
これは同時に太陽光投資の終わりを意味します。
それはいったいなぜなのか?その理由を説明していきます。
目次
現状と制度改正後の影響
まずは、現状の仕組みと変更後、どう仕組みが変わるかを簡単に整理しましょう。
現状
エネルギーの発電事業者は、自社で発電した電気を大手電力会社へ販売しています。
この時の価格は、国が決めた価格(固定価格)に基づいて買い取ってもらえました。
そのコストは「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされ、私たち消費者から回収しています。
制度改正後
再生可能エネルギーの種類と今後
・太陽光→廃止濃厚
・風力→廃止濃厚
・地熱→検討中
・風力→検討中
・バイオマス→検討中
・中小水力→検討中
廃止後の影響
家庭用の太陽光に関しては残す方向で調整する方針ですが、
発電事業者は大きな打撃を受けるのは必須です。
発電事業者は自分たちで売り先を見つけて、相対取引や電力卸売市場で売ったりします。
これによって従来のように価格は固定されることなく、販売価格は変動することになります。
従来通りの「単価●●円」が保証されなくなりますので、
発電所を作ってもいくらで販売できるか予測がつきません。
さらに、消費者側が上乗せしていた再エネ賦課金が無くなるため、
今までよりはるかに安い金額で販売されることになるでしょう。
今年の段階では「電気単価=14円」の固定価格となっていますが、
今年でその制度は最後だろうと見られています。
つまり、来年以降は確実に14円より低い価格でしか売れないことになります。
補足
市場価格が急落した場合は、国が一定の補填をすることも検討する見通しです。
ローリスクだった太陽光投資はハイリスクローリターンへ

これまでは、国が決めた固定価格を収入源とし、おおよその年利を予測できました。
現状の年利計算式
【年利=予想発電量 × 固定買取価格 ÷(発電所建設費 + メンテナンス費用)】
予想発電量に関しては日光の影響で多少前後しますが、
年間を通じての発電量はある程度把握できます。
毎年、FIT制度による買取価格は減っていましたが、
それに伴って発電所建設費も下がっていったため、年利は8〜9%前後を維持していました。
買取価格は国の保証で決まっていましたので、かなりローリスクな投資でした。
しかし、制度改正によって買取価格が予想できなくなるため、年利の予測は非常に困難となります。
これからの年利計算式
【年利=予想発電量 × 変動買取価格 ÷(発電所建設費 + メンテナンス費用)】
繰り返しになりますが、
・発電業者は自分たちで売り先を探さなくてはいけない
・探せなかった場合は電力卸市場へ流す
・消費者に上乗せしていた再エネ賦課金が廃止
この条件を踏まえると、買取価格に関しては「これまでより下がる」ということが明白です。
つまり、従来通りの年利を得ることは期待できないということです。
ローリスクだった太陽光発電はたちまち、ハイリスクローリターンな投資に姿を変えてしまうのです。
10kW以下という少量の売電パターン(固定価格期間10年)ですが、
こちらは今年から固定価格期間が終了します。
経産省は11円/kWhという金額を目安として設定しました。
そのため、これから投資する人はこれをもとに計算すれば大丈夫という人もいます。
しかし、今までもこの様な目安価格は下がり続けており、
この11円という金額も下がり続けることが予想されます。
九州電力、卒FIT電気の買取価格は7円 「仮想預かり」は2020年春から
引用:環境ビジネスオンライン
もし7円となった場合は、投資としてはかなり厳しい価格となります。
損益分岐点は?
一体、どれぐらいの買取価格であれば、発電施設の建設費を賄うことができるのでしょうか?
前提として、太陽光パネルを含めた資材建設費は段々と下がってきている実態があります。
ですから、いくら買取価格が下がったとしても、
イニシャルコストも下がっていっているから大丈夫といった話もありますが、
それはあり得ません。
なぜなら、イニシャルコストの下げ幅には限界があるからです。
それを踏まえた場合、損益分岐点は9円〜12円という話があります。
実際は11円程度になると、
自社でパネルを生産していない施工会社はほとんど利益を出すことができないそうです。
※(新見ソーラーカンパニー 代表 佐久本氏 談)
まとめ:太陽光投資の未来、展望

固定買取制度から入札制度になったことで、太陽への光投資は厳しくなります。
<FIT制度廃止によって予想されるネガティブな要因>
価格と年利予測
・発電業者は自分たちで売り先を探さなくてはいけない
・探せなかった場合は電力卸市場へ流す
・消費者に上乗せしていた再エネ賦課金が廃止
「固定買取価格」が崩壊すると、価格減少は必須の状況になることは間違いないでしょう。
よって、これまで容易にできた年利予測が困難になります。
不確かな情報への判断
・経産省の固定価格終了後、11円という目安金額で買い取ってくれるから安心
・イニシャルコストもどんどん下がってきているので安心
こういった情報がありますが、詳しく調べてみると、
この目安金額も今までの傾向を見ると、徐々に切り下がっていく。
イニシャルコストの下げ幅は限界があり、どんどん低下していっている。
というように情報をただ鵜呑みにするのではなく、
本当に正しい情報であるのかを正しく判断していかなければなりません。
しかし、投資型太陽光発電の普及により、
イニシャルコストが自家発電としてもペイできる価格まで下がったのは事実です。
これからは、投資から自家発電の時代に入っていくでしょう。
太陽光発電への投資を考えていた方は、違う投資先を検討されることをオススメします。
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